結論
国税庁は2026年8月、「非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書」について税務署提出用の書面様式を変更し、今後書面で提出する場合は国税庁サイト掲載の最新様式を使用するよう案内しています。このニュースは単なる用紙変更に見えますが、中国居住者が日本不動産を売却し、買主が日本法人や不動産業者である取引では重要です。売却代金支払時の源泉徴収と、翌年に行う法定調書提出は別の手続だからです。
誰が提出するのか
国税庁の手続案内では、非居住者または外国法人に不動産の譲渡対価を支払う法人、および不動産業者である個人が対象者とされています。提出時期は原則として翌年1月31日です。e-Taxソフトで調書・合計表を作成して電子提出する方法のほか、書面による提出も可能ですが、書面様式は2026年8月に変更されています。
10.21%源泉徴収とは別制度
中国在住の個人が日本国内不動産を売却する際、最も誤解されやすいのが10.21%です。日本の非居住者等から日本国内の土地・建物等を購入し、その代金を支払う者は、原則として支払時に10.21%を源泉徴収する必要があります。ただし、買主が個人で、自己または親族の居住用として購入し、譲渡対価が1億円以下である場合には源泉徴収不要となる例外があります。
一方、今回更新された法定調書は支払内容を税務署へ報告するための制度です。したがって、源泉徴収が必要かどうか、法定調書の提出義務が誰にあるか、売主の確定申告が必要かどうかは、それぞれ別々に確認する必要があります。
10.21%は売主の最終税率ではない
10.21%は売却代金に対する源泉徴収率であって、売主の最終的な不動産譲渡所得税率ではありません。例えば3,000万円で不動産を売却した場合、源泉徴収の対象取引であれば支払時点では売却代金を基礎に源泉税額が計算されます。しかし売主の最終税額は、取得費、譲渡費用、所有期間その他の日本税法上の条件を反映した譲渡所得を基に確定します。取得価格より安く売却して譲渡所得が生じない場合などには、確定申告により源泉徴収された税額の全部または一部が還付対象となる可能性があります。
中国人非居住者が売却時に準備すべきもの
海外在住者は日本の銀行口座を持っていないことも多く、売却決済だけに注意が集中しがちですが、税務書類を同時に整えることが重要です。売買契約書、購入時の契約書、取得費を示す領収書、仲介手数料、登記費用等の関連資料、今回の売却費用、源泉徴収された金額を示す資料を保存しておく必要があります。確定申告を予定する場合には納税管理人の選任なども確認します。
中国側の申告にも資料がつながる
売主が中国の税務居住者である場合、日本不動産の売却所得について中国側で国外所得としての申告検討が必要になる可能性があります。その際、日本の「売却代金」「源泉徴収された10.21%」「日本で確定した最終譲渡所得」「最終的な日本税負担」を分けて整理する必要があります。源泉徴収額をそのまま中国側の最終外国税額と考えるのは適切ではありません。
法人買主の場合
買主が法人の場合、個人の自己・親族居住用購入に関する源泉徴収例外は適用できません。そのため、非居住者売主との取引では源泉徴収要否を特に慎重に確認する必要があります。また法定調書の対象者にも法人が含まれているため、決済担当、会計担当、税理士、司法書士、不動産仲介会社間で役割分担を整理しておくことが実務上重要です。
実務上の注意
- 売主の「国籍」ではなく日本税法上の居住者・非居住者区分を確認する。
- 売却代金の支払時に源泉徴収要否を判定する。
- 源泉徴収税額と売主の最終税額を混同しない。
- 買主側は法定調書提出義務を別途確認する。
- 2026年8月以降に書面提出する場合は最新様式を利用する。
一次情報と確認日
国税庁「F1-28 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書(同合計表)」を2026年9月11日に確認。同ページは2026年8月に税務署提出用書面様式が変更されたことを明記しています。