結論
2026年8月21日、国家税務総局天津市税務局は「税務総局:国外保険収益への課税は新政策ではない」と題する情報を掲載しました。直接の話題は香港保険でしたが、国家税務総局の関係部門責任者は、中国の税収居民が国外で取得する所得について依法納税する原則は従来から存在し、特定の商品や地域だけを狙った新制度ではないと説明しています。この確認は、日本不動産から賃料や売却益を得る中国関係投資家にも重要です。
今回何が起きたか
掲載内容によれば、最近、中国本土の税収居民が香港保険から得る収益への課税が強化されたとの市場の受け止めが広がったことを受け、8月7日に国家税務総局の関係部門責任者が説明を行いました。同責任者は、中国税収居民が国外所得について納税義務を負う考え方は新しい政策ではなく、国外所得には保険収益だけでなく複数の課税所得が含まれるとしています。したがって、「最近突然、中国人の海外所得に新しい税金が導入された」と理解するのは正確ではありません。
日本不動産所得との関係
中国の国外所得に関する既存の公的ルールでは、中国の居民個人が国外不動産を譲渡して得る所得は国外源泉所得として整理され得ます。また国外の財産賃貸所得、財産譲渡所得などは、それぞれの所得区分に従って中国側の税額を計算する仕組みです。ここで重要なのは、「中国人だから海外所得すべてに一律20%」という整理をしないことです。納税義務を判断する出発点は国籍ではなく、その年に中国の税法上の居民個人に該当するかどうかです。所得の種類、取得時期、控除、国外納税額などによって計算過程も異なります。
日本で納めた税金はどう扱われるか
日本国内の不動産から生じる賃料や譲渡所得については、日本側で課税関係が生じることがあります。しかし、中国側で同じ所得が申告対象となる場合でも、日本税と中国税を単純に足して「二重に40%になる」などと計算するのは適切ではありません。中国の国外所得制度では、一定の要件の下、国外で実際に納付した所得税について中国側の計算上、限度額の範囲で外国税額控除を行う仕組みが設けられています。国外で納付したすべての税金が無条件で控除されるわけではなく、所得税としての性質、実際の納付、租税協定上の扱い、控除限度額などを確認する必要があります。
賃貸・売却時の実務
日本不動産を賃貸する場合、日本で非居住者に対する源泉徴収が発生するケースがありますが、源泉徴収額は日本での最終税額そのものとは限りません。確定申告により必要経費や所得計算を行い精算することがあります。売却についても、買主側で源泉徴収義務が発生する場合の源泉徴収率と、最終的な譲渡所得税額は別の概念です。中国側で国外所得申告を行う際には、日本の契約書、賃料明細、売買契約書、取得費・譲渡費用に関する資料、日本の申告書、納税証明資料などを保存しておくことが重要になります。
香港・シンガポール口座との関係
家賃や売却代金を香港またはシンガポールの銀行口座で受け取ったとしても、それだけで所得の源泉地や本人の税務居住地が香港・シンガポールへ移るわけではありません。日本不動産から生じた所得であること、中国の居民個人に該当するかどうか、口座がどの国にあるかは、それぞれ別に判定すべき事項です。CRSによる金融口座情報交換も、銀行口座の所在地ではなく、金融機関が確認した口座保有者の税務上の居住地等を基礎に報告対象を判断します。
今後確認すべきこと
今回の発表は新しい税率を創設したものではなく、従来の国外所得課税原則を改めて周知したものです。ただし、中国での税収居民判定、国外不動産所得の区分、日本で納付した税額の控除可能額、日中租税条約との調整には個別事情が影響します。日本不動産の取得前だけでなく、毎年の賃貸所得申告、売却年度、居住地を変更した年度には、本人の税務居住状況と証憑を年度ごとに整理することが実務上重要です。
一次情報確認日:2026年9月5日。