結論

シンガポール内国歳入庁(IRAS)は2026年8月20日、個人のCertificate of Residence(COR、居住者証明書)に関する案内を更新しました。CORは、外国・地域で生じる所得について租税条約上の恩典を請求する際、本人がシンガポールの税務居住者であることを証明するための書類です。中国人投資家にとって重要なのは、シンガポールに銀行口座があることと、シンガポールの税務居住者であることは同じではないという点です。

今回の更新内容の意味

IRASは、海外の国・地域から所得を得る場合、その国で課税されることがある一方、シンガポールと相手国との租税条約が適用できれば条約上の取扱いを請求できる場合があると説明しています。そのために用いられるのがCORです。今回のページは2026年8月20日に最終更新され、個人の申請方法や利用場面が改めて案内されています。

CORそのものが新しい税率を創設したわけではありません。しかし、中国本土、日本、シンガポールをまたぐ投資家にとって、条約適用を受けるためには「どこに口座を持つか」ではなく「どの国の税務居住者として認定されるか」が重要であることを改めて示しています。

シンガポールの税務居住者判定

IRASの個人税務居住者案内では、外国人について、前暦年にシンガポールで183日以上滞在・勤務した場合など、所定の条件により税務居住者として扱われることが示されています。連続3年間の滞在や、一定の2暦年にまたがる雇用についても行政上の取扱いがあります。

したがって、中国籍であること、シンガポールの銀行口座を保有していること、シンガポール法人の株主であることだけで、個人がシンガポール税務居住者になるわけではありません。実際の滞在・勤務状況等に基づいて判定します。

日本不動産との関係

シンガポールの税務居住者になったとしても、日本国内の不動産から生じる賃料や譲渡所得について、日本の国内源泉所得として課税関係が生じる可能性は残ります。特に非居住者が日本不動産を賃貸する場合、一定の支払者から支払われる賃料には20.42%の源泉徴収が行われますが、これは賃貸所得の最終税率ではありません。必要な確定申告を行い、所得と税額を精算する仕組みです。

同様に、非居住者が日本不動産を売却する場合、一定の場合に譲渡対価の10.21%が源泉徴収されますが、これも最終的な譲渡所得税率ではありません。取得費、譲渡費用、所有期間等に基づく譲渡所得の計算とは区別する必要があります。

中国の税務居住者でもある場合

中国税法上の居民个人に該当する場合には、中国国外から得た所得も中国の個人所得税制度上の検討対象となります。日本で実際に納付した所得税については、中国法上の外国税額控除を利用できる可能性がありますが、限度額や所得分類、納税証明等の条件があります。

そのため、シンガポールCORを取得したからといって、中国側の税務居住者判定が自動的に消えるとは限りません。複数国の国内法上の居住者に該当するケースでは、租税条約を含めた個別検討が必要です。

実務上のチェックポイント

  • シンガポールでの年間滞在・勤務日数を記録する。
  • CRS自己証明とCOR申請内容に矛盾がないか確認する。
  • 日本不動産の賃料・売却代金について、日本での源泉徴収と最終税額を分けて管理する。
  • 中国側で国外所得申告が必要な場合、日本の納税証明書等を保存する。
  • 銀行口座所在地だけで税務居住地を判断しない。

一次情報と確認日

IRAS「Apply for Certificate of Residence (COR)」を2026年9月9日に確認しました。同ページの最終更新日は2026年8月20日です。