【結論】

2026年9月5日時点で国税庁の現行案内を再確認すると、非居住者または外国法人(以下「非居住者等」)から日本国内の不動産を借り、その賃料を日本国内で支払う場合、支払者は原則として支払額の20.42%を所得税・復興特別所得税として源泉徴収します。ただし、この20.42%は非居住者個人オーナーの「最終税率」ではありません。あくまで賃料の支払段階で徴収する源泉徴収率であり、個人オーナーの最終的な日本の所得税額は、不動産所得を計算して確定申告を行い、源泉徴収済み税額と精算するのが基本です。

【20.42%が適用される仕組み】

国税庁によると、非居住者等から日本国内の不動産を借り、日本国内で賃料を支払う者は、法人だけでなく個人も、事業者であるか否かを問わず原則として源泉徴収義務を負います。対象は国内の土地・建物の賃料だけでなく、不動産上の権利の貸付対価などにも及びます。税率20.42%は、所得税20%に復興特別所得税を加味したものです。

例えば、中国在住の個人オーナーが東京のマンションを法人へ月額30万円で賃貸する場合、原則として61,260円が源泉徴収され、238,740円がオーナーへ支払われます。しかし、この61,260円がその月の「最終的な税額」と確定したわけではありません。

【個人の自己・親族居住用には例外】

重要な例外として、土地・家屋等を「自己またはその親族の居住の用」に供するために借りた個人が支払う賃料については、源泉徴収する必要がありません。したがって、海外オーナー所有のマンションを日本在住の個人が自宅として借りる場合には、原則20.42%を差し引かない取扱いとなり得ます。

一方、法人が借主となる場合や、個人でも店舗・事務所など事業目的で使用する場合には、この居住用例外をそのまま適用できません。「住宅だから源泉徴収不要」ではなく、誰が借り、誰の居住用として使用するのかを確認することが重要です。

【海外口座へ送金しても源泉徴収が消えるとは限らない】

賃料を香港、中国、シンガポール等の銀行口座へ送金すれば源泉徴収不要になる、という理解も誤りです。国税庁は、国外で賃料を支払う場合でも、支払者が日本国内に住所・居所・事務所等を有するときは、国内源泉所得を国内で支払ったものとみなして源泉徴収するとしています。国内払いの場合の納付期限は原則として支払月の翌月10日、該当する国外払いの場合は翌月末日です。

【20.42%と最終税額を混同してはいけない】

個人の不動産所得は原則として「総収入金額-必要経費」で計算します。必要経費には、不動産収入を得るため直接必要な費用のうち、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが含まれ得ます。したがって、年間賃料600万円だから600万円全額が所得になるわけではありません。

例えば年間賃料600万円から税務上認められる必要経費を控除し、不動産所得が300万円となる場合でも、源泉徴収自体は原則として支払賃料を基準に行われています。このため、確定申告で計算した所得税額より源泉徴収済み税額が多ければ還付となる可能性があり、逆に不足すれば追加納付となる場合があります。

なお、2026年度税制改正では所得税の基礎控除等に変更があります。国税庁の2026年Q&Aは、日本国内不動産の貸付所得について申告する非居住者について、居住者限定の基礎控除加算特例は適用されない一方、改正後の所得税法上の基礎控除が問題になることを明示しています。したがって、非居住者の最終税額は20.42%という固定税率ではなく、その年の所得計算と適用可能な控除を踏まえて判断する必要があります。

【中国人投資家への影響】

「中国人オーナー=日本の非居住者」と国籍だけで判断することはできません。日本の所得税法では、国内に住所を有する個人、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人が原則として居住者となり、それ以外が非居住者となります。中国籍でも日本の居住者となるケースはあり、日本国籍でも非居住者となるケースがあります。

中国・香港・シンガポール等を生活拠点とする投資家が日本不動産から賃料を得る場合、日本では国内源泉所得として課税対象となり得ます。国税庁も、日本が締結する多くの租税条約では不動産賃貸所得について不動産所在地国にも課税権を認めていると説明しています。 一方、居住地国側でも申告対象となる可能性があるため、現地法、租税条約、外国税額控除等は別途確認する必要があります。

【日本不動産実務への影響】

海外オーナー物件では、管理会社・仲介会社が入居申込みの段階から「借主が個人か法人か」「個人の場合は自己・親族の居住用か」を確認することが重要です。同じマンションでも、個人の自宅契約と法人契約では源泉徴収の取扱いが変わる可能性があります。

また、海外在住オーナーが日本で確定申告等の国税手続きを行う必要がある場合、納税管理人の選任が必要となるケースがあります。国税庁の2026年分申告案内でも、国内に住所・居所を有しない者が日本で税務手続きを行う場合の納税管理人制度が改めて示されています。

【注意点】

海外オーナーへの賃料支払いでは、①所有者が個人か外国法人か、②日本税法上の居住者・非居住者区分、③借主が個人か法人か、④自己・親族の居住用例外の有無、⑤20.42%源泉徴収と納付、⑥必要経費を含む確定申告、⑦納税管理人、⑧居住地国側の申告・外国税額控除を分けて確認する必要があります。

最も重要なのは「20.42%差し引かれたから日本の税金は終了した」と考えないことです。20.42%は支払時の源泉徴収率であり、個人オーナーの最終税負を示す税率ではありません。

一次情報:国税庁「No.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」。国税庁は、原則20.42%の源泉徴収、個人の自己・親族居住用の例外、国外払いの場合の取扱いなどを明示しています。