結論

国税庁は2026年8月、「非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書」の税務署提出用書面様式を変更し、今後は国税庁サイト掲載の最新様式を使用するよう案内しました。今回確認された変更は法定調書の様式更新であり、日本不動産売却時の税率を変更するものではありません。ただし、非居住者である中国人が日本不動産を売却する取引では、買主側の報告義務、源泉徴収、売主側の確定申告が複数の制度として並行するため、実務上重要です。

今回更新された手続

国税庁のF1-28手続案内によると、対象は非居住者または外国法人に不動産の譲渡対価を支払う法人、および不動産業者である個人です。支払調書と合計表の提出時期は翌年1月31日とされています。e-Taxによる提出のほか書面提出も可能ですが、書面の場合は2026年8月に変更された最新様式を使用する必要があります。手続根拠は所得税法第225条第1項第9号です。

支払調書と源泉徴収は別制度

ここで特に注意したいのは、「支払調書が提出されること」と「売却代金から源泉徴収されること」と「売主の最終的な所得税額」が同じではない点です。非居住者に対する日本国内の不動産譲渡対価については、一定の場合に買主が10.21%を源泉徴収する制度がありますが、10.21%は売却益に対する最終税率を意味しません。源泉徴収は支払時点で行われる前払い的な徴収であり、その後、取得費、譲渡費用、所有期間などを基に譲渡所得を計算し、必要に応じ確定申告で精算することになります。

中国人売主への影響

中国に居住する中国人が日本のマンションや一棟物件を売却する場合、日本の在留カードを持っていないことや売却代金を香港口座で受け取ることだけで、日本の税務義務がなくなるわけではありません。日本所在不動産の売却という所得発生地をまず確認し、非居住者として日本側でどの申告・源泉徴収制度が適用されるかを判断します。

さらに本人が中国の税収居民に該当する場合、日本で生じた所得が中国側で境外所得として申告対象となる可能性があります。その際、日本で実際に納付した所得税について中国の外国税額控除制度を利用できる可能性があります。したがって「日本で10.21%引かれ、その後中国でさらに20%課税される」と単純計算することはできません。

売却実務で保存すべき資料

  • 日本不動産の取得時売買契約書、取得費資料、仲介手数料等
  • 今回の売却契約書、決済明細、譲渡費用
  • 源泉徴収された場合の金額を確認できる資料
  • 日本で提出した確定申告書と納税記録
  • 中国等で外国税額控除を検討するための日本の納税証憑

実務上の注意点

買主が個人で、自己または親族の居住用として一定条件の不動産を購入する場合など、源泉徴収の取扱いには例外があります。個別取引で源泉徴収が必要かどうかは、売主の居住者区分だけでなく買主属性、用途、支払金額等の条件確認が必要です。また、税務上の非居住者判定は国籍だけでは決まりません。

一次情報と確認日

国税庁「F1-28 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書(同合計表)」を2026年9月5日に確認。国税庁は同ページで、2026年8月に書面様式を変更したことを明記しています。