結論
2026年12月1日から日本の所得税に関する基礎控除等の改正が施行される。中国人投資家が特に注意すべき点は、日本の居住者と非居住者では適用できる控除が同じとは限らないことである。国税庁が2026年5月に公表した令和8年度税制改正Q&Aでは、非居住者の基礎控除に関する取扱いが具体的に説明されている。今回の改正を理由に、日本不動産を所有するすべての外国人の税負担が一律に軽減されると考えることは適切ではない。
今回の制度変更
国税庁によると、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正は、2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用される。また、2027年1月1日からは給与等の源泉徴収税額表の改正などが適用される。
今回の改正には給与所得者の年末調整に関する内容も多く含まれるが、不動産所得を有する非居住者についても、基礎控除の適用関係を確認する必要がある。特に、年の途中で海外へ転出した人と、年間を通じて日本の非居住者である人を区別することが重要である。
非居住者の基礎控除
国税庁Q&Aの問6-4では、海外勤務により日本の非居住者となり、日本国内の不動産賃貸所得について納税管理人を通じて確定申告を行う事例が示されている。回答では、基礎控除そのものの引上げと、居住者のみを対象とする基礎控除等の特例による加算を区別している。
したがって、年間を通じて非居住者である場合、居住者向けの特例加算を当然に利用できるわけではない。実際の控除額は所得年分、居住者区分、適用法令等を確認して計算する必要がある。
中国人投資家の居住者判定
日本の所得税法では、国内に住所がある個人、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を原則として居住者とする。住所は生活の本拠を意味し、客観的な事実によって判断される。中国籍であることだけを理由に、日本の非居住者と判断することはできない。
例えば、日本で長期間生活し、家族や仕事の中心が日本にある中国籍投資家と、中国本土に生活の本拠があり日本には賃貸マンションだけを所有する投資家では、所得税の適用関係が異なる可能性がある。両国で居住者に該当する可能性がある場合には、租税条約による調整も検討する必要がある。
日本不動産の賃貸所得
中国本土居住者が日本に賃貸マンションを所有している場合、日本国内不動産から生じる所得について日本の課税関係を確認する必要がある。賃料収入から必要経費を考慮して不動産所得を計算し、申告義務や適用可能な控除を検討する。
非居住者への賃料支払いでは、支払者や物件用途等に応じて源泉徴収が必要となる場合がある。源泉徴収率20.42%が適用される場面があっても、それを賃貸所得の最終税率と表現してはならない。申告納税方式により最終税額を計算し、源泉徴収税額を精算する場合があるためである。
売却所得との区別
不動産の売却所得は、賃貸所得とは異なる課税方式で扱われる。非居住者等から日本国内の土地・建物等を購入する場合、買主に原則10.21%の源泉徴収義務が生じる制度があるが、一定の例外も存在する。10.21%は売主の最終税率ではない。
売却時には取得費、譲渡費用、所有期間、適用可能な特例などを確認する。基礎控除の改正があったからといって、不動産譲渡所得の税額計算が一律に同じ方法で変更されるわけではない。
中国側の国外所得申告
中国の税務居住者に該当する場合、日本の賃貸所得や不動産売却所得について中国側の国外所得申告が必要となる可能性がある。日本で納付した所得税は、一定の条件と限度額の下で中国側の外国税額控除に利用できる可能性がある。日本での控除改正によって日本の最終納税額が変わる場合、中国側で控除できる税額にも影響する可能性があるため、実際の納税証明資料を基に確認することが重要である。
今後の実務対応
2026年分の確定申告に向け、居住者区分、転出日、国内不動産所得、源泉徴収済額、基礎控除の適用条件を整理したい。海外居住者は納税管理人の選任状況も確認する必要がある。個別の控除額や申告方法は最新の国税庁資料と実際の事実関係に基づいて判断する。
一次情報
国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」、2026年5月公表。2026年12月1日施行。確認日:2026年11月7日。