結論
中国人投資家が特に注意すべき最新動向は、日本政府が都心の新築マンションにおける投機的な短期売買について、税制上の措置を含む対応を正式な税制改正要望の検討対象に入れたことです。ただし、2026年9月9日時点で新税、税率、保有期間、外国人だけを対象とする制度などが決まったわけではありません。現段階はあくまで2027年度税制改正に向けた要望であり、具体策を既成事実として投資判断に織り込むべきではありません。
今回何が起きたか
財務省が公表した令和9年度、すなわち2027年度税制改正要望のうち、国土交通省は「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」を掲げました。要望書では、都心の大規模マンションを中心とした近年の新築マンション価格高騰について、実需に基づかない投機的取引が一因との指摘を踏まえ、抑制方策を検討し、所要の措置を講じるとしています。さらに、2026年度税制改正大綱で示された考え方を引用し、短期売買の増加傾向を踏まえ、税制上の措置も含め必要な措置を講ずるとの方向性を確認しています。
現時点で決まっていないこと
重要なのは、要望書の税目欄が「―」となっており、具体的な税制がまだ示されていないことです。短期譲渡に対する追加課税、登録免許税や不動産取得税の変更、法人・個人別の規制、購入後一定期間の転売制限など、具体的な制度内容は確認できません。また、国籍や外国人投資家を対象とするとの記載もありません。そのため「中国人購入者への増税が決まった」「外国人だけに新税が課される」といった解釈は現時点では根拠がありません。
中国人投資家への影響
影響が最も大きい可能性があるのは、東京23区などで新築タワーマンションを購入し、数か月から数年以内の転売益を狙う投資です。制度が将来具体化すれば、購入時の取得コスト、売却時の税負担、保有期間による収益性、出口価格に影響する可能性があります。一方、長期賃貸を目的として保有する投資家や自ら居住する購入者について同じ影響が生じるかは現段階では分かりません。
また、日本の不動産を売却する際、中国に住む所有者が日本税法上の非居住者である場合、土地・建物等の譲渡対価について一定の場合に10.21%の源泉徴収が行われます。しかし、これは売却益に対する最終税率ではなく、確定申告で実際の譲渡所得を計算して精算する仕組みです。将来、新たな短期売買対策が導入されたとしても、既存の源泉徴収制度と新制度を区別して確認する必要があります。
中国側の税務との関係
中国籍であることだけで中国の全世界所得課税が決まるわけではなく、中国側での税務居住者該当性を別途判定する必要があります。中国の税務居住者が日本不動産の賃貸所得や譲渡所得を得た場合には、中国の国外所得申告が問題となり得ますが、日本で納付した所得税については中国法上の外国税額控除の対象となる可能性があります。したがって、日本で税金を支払った上に中国でも同じ率を単純加算する考え方は適切ではありません。
実務上の注意点
- 現時点では法改正ではなく税制改正要望であることを区別する。
- 「外国人規制」「中国人向け課税」と断定しない。
- 短期転売を前提とする物件では、今後の税制改正大綱と法案を確認する。
- 契約前に購入価格だけでなく取得税、登録免許税、譲渡時課税、源泉徴収、仲介手数料を含めた出口収支を再計算する。
今後確認すべきこと
今後の焦点は、2026年末に向けてまとめられる税制改正大綱で具体的な税目、対象物件、保有期間、個人・法人の区別、既存物件への適用関係が示されるかです。正式な法案成立前に税負担を断定することはできません。
一次情報と確認日
財務省「令和9年度税制改正要望(国土交通省)」および国土交通省要望資料「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」を2026年9月9日に確認しました。