結論
国税庁は2026年8月、非居住者又は外国法人に日本国内の不動産使用料等を支払う場合に用いる税務署提出用の法定調書の書面様式を変更しました。今回確認された変更は法定調書の様式に関するものであり、これ自体が非居住者の賃貸所得に対する税率を変更するニュースではありません。しかし、中国居住者が日本のマンション、一棟物件、店舗、事務所などを保有して賃貸している場合、借主・管理会社・所有者の実務を整理するよい機会です。
今回何が起きたか
国税庁の「F1-23 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書(同合計表)」では、令和8年8月に税務署提出用の書面様式が変更されたことが案内されています。今後書面提出する場合は最新様式を使用する必要があります。手続対象者は、非居住者又は外国法人に国内源泉所得を支払う者で、提出時期は原則として翌年1月31日です。
源泉徴収と最終税額は別
中国人投資家にとって重要なのは、支払調書の変更そのものより、日本の非居住者課税の仕組みを誤解しないことです。日本国内不動産から生じる賃料について、一定の場合には支払者側に源泉徴収義務が発生します。しかし、支払時に控除される源泉所得税等は、常に貸主の最終税額を意味するものではありません。とくに20.42%という数字だけを見て「非居住者の賃貸所得の最終税率は20.42%」と理解するのは適切ではありません。所得の区分、必要経費、日本での申告義務、租税条約の適用などを踏まえて最終的な税額を確認する必要があります。
中国居住オーナーへの影響
中国本土に居住しながら日本不動産を賃貸するケースでは、まず日本側で国内源泉所得としての処理が必要になります。そのうえで本人が中国の税務上の居民個人に該当する場合、日本の不動産から得た賃貸所得は中国側でも国外所得として検討対象になります。ただし、日本で税金を払ったから中国で同額をもう一度単純に課税する、あるいは日本税率と中国税率を足し算するという考え方ではありません。中国の国外所得課税には外国税額控除制度があり、日本で適法に負担した所得税について中国側の控除限度額の範囲で控除できる可能性があります。
香港・シンガポール口座への送金
日本の賃料を香港やシンガポールの銀行口座で受け取ったとしても、それだけで所得の発生地や本人の税務居住地が変わるわけではありません。日本国内不動産から生じる賃料であること、所有者が日本の居住者か非居住者か、中国の税務上の居民個人かどうか、という論点を分けて判断する必要があります。銀行口座所在地は資金の受取場所であり、納税義務を決める唯一の基準ではありません。
実務上の注意点
- 所有者の日本における居住者・非居住者区分を確認する。
- 賃借人が法人か個人か、用途が居住用か事業用かを確認する。
- 源泉徴収された金額と年間賃料を管理会社の送金明細等で保存する。
- 日本の確定申告が必要な場合は、修繕費、管理費、減価償却費等の必要経費を整理する。
- 中国の居民個人に該当する場合は、日本で納付した税額を証明する資料を保存する。
今後確認すべきこと
今回の様式変更は税率改正ではありません。投資家は、管理会社から「20.42%控除されているから日本の税金は終了」と説明された場合にも、その金額が源泉徴収なのか最終税額なのかを確認すべきです。また、所有者が日本へ移住した場合や中国から日本へ生活拠点を移した場合には税務居住地の判定自体が変わるため、毎年同じ処理になるとは限りません。
一次情報と確認日
国税庁「F1-23 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書(同合計表)」を2026年9月4日に確認しました。