結論
国税庁は2026年8月、「非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書」とその合計表について、税務署提出用の書面様式を変更しました。国税庁は今後、紙で提出する場合には掲載されている最新様式を使用するよう案内しています。これは税率変更ではありませんが、中国本土など海外に居住する日本不動産オーナーに家賃を支払う法人・事業者の実務に直接関係します。
今回何が起きたか
国税庁の手続ページでは、非居住者または外国法人に国内源泉所得を支払う者を対象として、不動産使用料等の支払調書を翌年1月31日までに提出する手続を案内しています。2026年8月に税務署提出用の書面様式が変更され、書面提出の場合は最新様式を使用することが明示されました。e-Taxによる作成・提出も可能です。
制度上の背景
中国居住者が東京や大阪などの不動産を所有し、日本の法人や事業者へ賃貸している場合、日本国内不動産から発生する賃料は日本の国内源泉所得として扱われ得ます。支払者側では所得税法上の源泉徴収義務と法定調書提出義務を検討する必要があります。ただし、源泉徴収と最終的な所得税額は同じ概念ではありません。例えば非居住者に対する不動産賃料について適用される源泉徴収は、一定の場合に支払段階で行われる税の前払い・徴収制度であり、それだけで年間の最終税負担が確定するとは限りません。
適用対象と例外
国税庁が今回更新したページの手続対象者は「非居住者又は外国法人に国内源泉所得の支払をする者」です。提出期限は原則として翌年1月31日です。一方、個人が自己または親族の居住用として借りる場合など、源泉徴収制度には別途例外が存在するため、すべての賃貸契約について同じ処理になるわけではありません。また、税務上の非居住者かどうかは中国籍であることだけで決まらず、日本の所得税法上の住所・居所などを基に判定されます。
中国人投資家への影響
中国本土に戻った後も日本のマンションを保有し続け、賃貸管理会社を通じて家賃を受け取るケースでは、オーナー自身の確定申告だけでなく、賃借人や支払者側でどのような源泉徴収・法定調書処理が行われているかを確認することが重要です。年間家賃、管理費、修繕費、固定資産税、借入金利息などの資料とともに、支払調書や源泉徴収に関する資料を保存しておくと、日本での申告だけでなく、中国で国外所得を申告する必要が生じた場合にも税額確認がしやすくなります。
中国側の申告との関係
中国の税務居住者に該当する場合、日本不動産から生じた賃貸所得が中国側の国外所得申告の対象となる可能性があります。その際、日本で実際に納付した所得税について、中国法上の外国税額控除が認められる可能性があります。したがって「日本で源泉徴収されたから中国では何もしなくてよい」「日本と中国の税率を単純に足せばよい」という理解は適切ではありません。日本での源泉徴収額、日本の確定申告後の最終税額、中国での所得区分、外国税額控除限度額を分けて確認する必要があります。
実務上の注意点
- 2026年8月以降に書面提出する場合は国税庁掲載の最新様式を使用する。
- 賃貸管理会社任せにせず、誰が家賃の法的な支払者となるのか確認する。
- 源泉徴収税額と年間の最終所得税額を混同しない。
- オーナーの国籍ではなく、日本法上の居住者・非居住者区分を確認する。
- 中国側で国外所得申告が必要な場合に備え、日本の納税資料を保存する。
今後確認すべきこと
今回確認できる変更は書面様式の更新であり、これ自体が税率変更を意味するものではありません。実際の源泉徴収義務、所得税申告、租税条約、中国での外国税額控除については、賃貸契約の形態と本人の税務居住地を踏まえて個別に確認する必要があります。
一次情報確認日:2026年9月4日