結論
2026年8月31日時点の令和9年度、すなわち2027年度税制改正要望が公表され、国土交通省は住宅・不動産分野で複数の税制特例の延長または拡充を求めました。中国人投資家にとって重要なのは、これはまだ成立した税制改正ではないという点です。2027年の購入コストや売却コストを現在の要望だけで確定的に計算することはできませんが、今後の制度変更を読む上で重要な先行情報です。
今回何が公表されたか
財務省の令和9年度税制改正要望一覧によると、国土交通省は「住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置の拡充及び延長等」「買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置の拡充及び延長」「工事請負契約書及び不動産譲渡契約書に係る印紙税の特例措置の延長」「住宅関係諸税に係る適用要件の合理化」などを要望しています。さらに、REITや特定目的会社、不動産特定共同事業に関連する登録免許税特例の延長要望も含まれます。
なぜ中国人投資家に関係するのか
日本不動産の取得費は物件価格だけではありません。登録免許税、不動産取得税、印紙税、司法書士費用、仲介手数料などの取引費用が発生します。税制特例の延長の有無は、特に住宅を取得する投資家や、買取再販業者からリノベーション済み住宅を購入するケース、法人・ファンドを通じて不動産を取得するケースのコストに影響する可能性があります。ただし、それぞれの特例には住宅用途、床面積、取得者、取得時期その他の適用要件があり、外国人であれば自動的に利用できるという制度ではありません。
住宅用特例と投資物件を区別する
中国人投資家が特に注意すべき点は、「住宅に関する税制優遇」と「投資目的の住宅購入」が必ず同じ扱いになるわけではないことです。本人居住を前提とする制度では、海外在住で日本のマンションを賃貸運用する投資家が要件を満たさないことがあります。したがって、税制改正要望に住宅向け特例が掲載されたことだけを見て、非居住者による投資用マンション購入にも軽減税率が適用されると判断してはいけません。
印紙税特例も購入・売却コストに関係
国土交通省は工事請負契約書および不動産譲渡契約書に関する印紙税特例の延長も要望しています。紙の不動産売買契約を締結する場合、契約書の印紙税は決済前の取引コストの一つです。ただし、電子契約の扱いなど契約方式によって論点が異なります。中国居住者が来日せず遠隔で取引する場合には、契約方法と税務書類の形式を事前に仲介会社、司法書士等と確認することが重要です。
法人・ファンド投資への論点
今回の要望にはREIT、特定目的会社、不動産特定共同事業に関係する登録免許税特例も含まれています。個人が区分マンションを直接購入する案件とは対象が異なりますが、中国・香港・シンガポールの法人やファンドを利用した大型不動産投資では関連する可能性があります。もっとも、海外法人を介在させれば税負担が自動的に下がるわけではなく、日本の法人課税、源泉税、実質的な事業主体、租税条約、出資構造など別の検討が必要です。
現時点でしてはいけないこと
税制改正「要望」は政府の最終決定でも、法律の成立でもありません。今後、税制改正大綱、法律案、国会審議、公布、政省令という過程で内容が変更・削除される可能性があります。そのため2027年に購入予定の物件について、今回の要望に記載された優遇が必ず継続すると想定して投資採算を組むのは早計です。
実務上の確認事項
- 購入する住宅が自己居住用か賃貸投資用かを区別する。
- 登録免許税や印紙税の特例について適用要件を個別に確認する。
- 2027年決済案件は年末の税制改正大綱と成立法を再確認する。
- 法人・REIT・不動産特定共同事業の特例を個人購入に流用して考えない。
- 現在の税率と将来の要望段階の制度を混同しない。
一次情報確認日:2026年9月4日。公表内容は税制改正要望であり、現時点で施行済みの改正ではありません。