結論
日本不動産を保有しながら中国本土、香港、シンガポールなどで金融資産を管理する投資家にとって、税務情報の国際的な連携は継続的に確認すべきテーマとなっている。OECDの税務透明性グローバル・フォーラムは2026年10月27日、第13回税務当局間情報交換会議の開催を発表した。今回の会議自体が日本や中国の税率を変更するものではないが、国境を越えた税務情報交換の実務が重要な政策課題であることを示している。
今回の発表
会議は2026年10月27日から29日にかけてモンテネグロのコトルで開催され、約84の法域から約200人が参加すると公表された。議題には、要請に基づく情報交換、金融口座情報の自動交換、暗号資産取引に関する情報交換が含まれる。税務当局の担当者が国際基準の実施経験、実務上の課題、協力体制について意見交換する場である。
情報交換の制度的背景
国際税務情報交換には複数の仕組みが存在する。要請に基づく情報交換は、一定の法的要件の下で税務当局が他の法域に情報提供を求める方式である。CRSによる自動情報交換は、対象金融機関が収集した報告対象金融口座情報を、関係当局間の有効な交換関係に基づいて定期的に交換する仕組みである。
暗号資産についてはCARFという別の国際的報告枠組みが整備されている。これらは対象資産、情報の取得方法、報告主体、開始時期が異なるため、すべての海外取引が同じ方法で自動的に報告されるわけではない。
中国人投資家への影響
例えば、中国本土に居住する個人が香港の銀行口座から日本の不動産購入代金を送金し、賃料をシンガポールの金融口座で管理している場合を考える。この場合、日本不動産から発生した所得の税務上の性質、本人の税務居住地、金融口座の所在地、実際の資金移動を区別する必要がある。
中国の税務居住者に該当する場合、国外所得に関する中国側の申告義務が生じる可能性がある。日本では不動産所在地に基づく課税関係を検討する必要がある。香港やシンガポールの口座を利用しても、それだけで所得の発生地が香港やシンガポールへ移るわけではない。
購入時の確認
購入時には資金の出所、購入者の名義、送金者と所有者の関係を確認する。本人資金による購入なのか、法人からの借入金なのか、第三者からの贈与なのかによって、税務上の検討事項が異なる。送金の存在だけで贈与や所得と断定することも適切ではない。
賃貸・保有時の確認
日本不動産を賃貸する場合には、賃料収入、管理費、修繕費、借入金利息などの記録を整える。日本の非居住者に対する賃料支払いでは、支払者や物件の用途などにより源泉徴収の要否を検討する必要がある。源泉徴収された金額が常に最終税額になるわけではなく、確定申告による精算が必要となる場合がある。
売却時の確認
売却時には取得費、譲渡費用、所有期間、源泉徴収の有無などを確認する。非居住者等から日本の土地・建物を購入する場合、買主には原則として対価の10.21%を源泉徴収する義務があるが、一定の例外が存在する。これは売主の最終的な税率ではない。
中国側で国外所得申告が必要となる場合には、日本で納付した所得税の外国税額控除が認められる可能性がある。ただし、控除対象となる税額と限度額を個別に確認する必要がある。
今後の注意点
今回のOECD会議は、個別の日本不動産取引について新しい情報提出義務を創設したものではない。実際にどの情報が交換されるかは、関係国の法令、交換関係、報告対象の範囲による。投資家は各国の制度を確認し、申告書、納税証明書、金融口座資料の整合性を保つことが重要である。
一次情報
OECDグローバル・フォーラム、2026年10月27日発表。確認日:2026年11月7日。