結論

香港に金融口座や暗号資産を保有する中国人投資家にとって、国際税務情報の透明化が一段と進む重要な動きが確認された。香港政府は2026年11月4日、暗号資産報告枠組み(CARF)と改正共通報告基準(CRS)に関する法案が立法会で可決されたと発表した。今回の発表は日本不動産への新税導入を意味するものではないが、海外資産や資金移動について説明できる記録を整える重要性を高める。

今回何が起きたか

香港税務局の公式発表によると、CARFは2027年に実施され、対象サービス提供者による情報収集を経て、2028年から協力相手との情報交換が開始される予定である。改正CRSは2028年に適用され、新基準に従った金融口座情報の自動交換は2029年から予定されている。香港政府は情報交換について、相互主義、情報の秘密保持、安全性を前提としている。これらの日程は香港政府が公表した制度導入計画であり、個々の口座情報が特定の国へ必ず送信されることを意味しない。

制度の背景

CRSは金融機関が口座保有者の税務居住地などを確認し、対象となる金融口座情報を税務当局へ報告する国際的な仕組みである。CARFは暗号資産取引に関する報告制度であり、金融口座を中心とした従来のCRSとは報告対象が異なる。両制度を同一視せず、資産の種類、サービス提供者、口座保有者、報告対象取引を区別する必要がある。

中国人投資家への影響

中国本土に生活の本拠があり、香港の銀行口座を利用して東京や大阪の不動産を購入する場合を考える。香港口座を保有することだけで香港の税務居住者になるわけではない。また、香港口座から日本へ送金したという事実だけで、送金額が日本または中国で新たな課税所得になるわけでもない。課税関係は本人の税務居住地、所得の種類、所得発生地、適用される国内法や租税条約などに基づいて判断する。

一方、資金の原資が過去の不動産売却益、配当、事業所得、暗号資産取引益などである場合、それぞれについて所得の発生時点と申告状況を確認する必要がある。日本不動産の購入代金として使用したからといって、過去に発生した所得の申告義務が消滅するわけではない。

日本不動産の賃貸・売却との関係

日本国内の不動産から生じる賃貸所得や譲渡所得については、日本での課税関係を別途検討する。非居住者から日本の土地・建物等を取得する場合、買主に原則10.21%の源泉徴収義務が生じる制度がある。ただし、一定の個人による自己または親族の居住用購入で対価が1億円以下の場合などには例外がある。この10.21%は売主の最終的な譲渡所得税率ではなく、源泉徴収と確定申告による税額精算を区別する必要がある。

中国の税務居住者に該当する場合、日本不動産から得た所得について中国側の申告対象となる可能性がある。日本で納付した対象税額については、一定の条件と限度額の下で外国税額控除が利用できる可能性がある。日本と中国の税率を単純に加算して税負担を計算することは適切ではない。

実務上の確認事項

香港口座を利用する投資家は、口座開設時の税務居住地申告、納税者番号、本人確認情報、送金明細、資金原資を示す契約書、暗号資産の取得・売却履歴を整理しておきたい。香港法人を通じて不動産投資を行う場合には、法人の税務居住地、実質的支配者、法人と個人の資金移動を区別する必要もある。

今後の確認事項

今後公表される香港税務局の実施指針、対象事業者の範囲、報告項目、協力相手国との交換関係を継続確認することが重要である。制度の実施と個別納税義務は別問題であり、申告漏れや過去取引の処理については関係国の専門家による確認が望ましい。

一次情報

香港税務局、2026年11月4日発表。確認日:2026年11月7日。