結論

日本で不動産を購入・売却する中国人投資家に直接関係する最新税制動向として、国土交通省は2027年度税制改正要望で、不動産譲渡契約書に係る印紙税の軽減措置を2030年3月31日まで3年間延長するよう求めました。現行制度の期限は2027年3月31日です。ただし、これは2026年9月9日時点では政府の最終決定や成立済み法改正ではなく、税制改正要望の段階です。

今回何が公表されたか

財務省が公表した令和9年度税制改正要望資料によると、国土交通省は「工事請負契約書及び不動産譲渡契約書に係る印紙税の特例措置の延長」を要望しました。対象となる不動産譲渡契約書では、契約金額に応じて本則税額より軽減された印紙税額が適用されています。要望は現在の適用期限を2027年3月31日から2030年3月31日へ延長するものです。

具体的な軽減額

国交省資料では、不動産譲渡契約書について、契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、本則2万円に対して現行特例は1万円、5,000万円超1億円以下では本則6万円に対して3万円、1億円超5億円以下では本則10万円に対して6万円、5億円超10億円以下では本則20万円に対して16万円とされています。50億円超では本則60万円に対して48万円です。中国人投資家が東京の区分マンション、一棟収益物件、土地などを購入する場合、紙の売買契約書が課税文書に該当するケースではこの差額が取得時コストになります。

重要なのは「延長要望」であること

今回の資料には2030年3月31日まで延長する方針が記載されていますが、これは要望内容です。今後、政府・与党の税制改正大綱、法案、国会審議を経て初めて正式な延長の有無が確定します。そのため、2027年4月以降の契約を現在の軽減税額で確定的に見積もることはまだできません。

中国人投資家への実務影響

数千万円から数億円規模の日本不動産では、印紙税そのものが投資総額に占める割合は大きくありません。しかし、決済時の必要資金を正確に組むには無視できません。特に中国本土、香港、シンガポールから日本へ資金を移動して決済する場合、売買代金だけでなく、仲介手数料、登記費用、登録免許税、不動産取得税、固定資産税等の精算金と合わせて諸費用を準備する必要があります。

印紙税は日本国内の契約文書に関する税であり、購入者の国籍や税務居住地によって基本的に税額が決まる制度ではありません。また、このニュースは日本で不動産を所有した後の賃貸所得税や売却時の譲渡所得税とは別問題です。非居住者が賃貸料を受け取る場合の20.42%や、土地等の譲渡対価に対する10.21%は源泉徴収の制度であり、印紙税とは性質が異なります。20.42%や10.21%を最終税率と扱うことも適切ではありません。

中国側の税務との関係

印紙税の支払い自体から、中国に追加の所得が生じるわけではありません。一方、日本不動産から賃貸所得や売却所得を得る場合、中国税務居住者であれば中国で国外所得申告が必要となる可能性があります。そこで問題になるのは所得課税と外国税額控除であり、契約書の印紙税とは区別して管理する必要があります。

実務上の注意点

  • 2027年3月31日までの現行制度と、2027年4月以降の延長要望を混同しない。
  • 契約金額に応じた税額区分を売買契約締結前に確認する。
  • 契約方式や作成される文書ごとの課税関係を個別に確認する。
  • 印紙税だけでなく登記費用等を含む総取得コストで投資採算を判断する。

今後確認すべきこと

2026年末の税制改正大綱と、その後の租税特別措置法改正で実際に延長されるかを確認する必要があります。

一次情報と確認日

国土交通省の2027年度税制改正要望資料を2026年9月9日に確認しました。