結論
国税庁は2026年8月27日、「相続税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし」を公表しました。これは2026年6月25日付の相続税法基本通達等の改正内容を解説するもので、所得税法等の一部改正法や公益信託に関する法律等の施行に伴う所要の整備が背景です。今回の公表を「外国人が日本不動産を相続する税制が8月27日から全面変更された」と理解するのは正確ではありません。しかし、中国人投資家が日本不動産を長期保有する際、購入・賃貸・売却だけでなく相続・贈与まで含めて保有形態を確認する必要性を改めて示す最新の資産課税情報です。
今回何が公表されたか
国税庁資産課税課は、2026年8月27日付「資産課税課情報第14号」として改正通達のあらましを公表しました。国税庁によれば、相続税法基本通達や租税特別措置法の相続税特例関係通達等について、2026年6月25日付で所要の整備が行われ、その内容を実務向けに整理したものです。単なる条項移動など形式的な改正については解説から省略されています。
日本不動産投資家にとっての意味
今回の改正解説自体が、中国人による日本不動産の相続税率を新たに設定したものではありません。それでも日本不動産を長期保有する外国人にとって相続税は重要です。投資家本人が死亡した場合、日本不動産が相続財産となり、日本の相続税の課税関係を検討する必要が生じ得ます。課税範囲は単純に「中国国籍だから中国だけ」「日本不動産だから必ず日本だけ」と決められるものではありません。
国籍・住所・財産所在地を分ける
国際相続では、被相続人と相続人・受遺者の住所等の状況、日本国内財産か国外財産かなどを確認して、日本の相続税法上どの範囲の財産が課税対象となるかを判断します。したがって、香港やシンガポールに銀行口座を持つ中国人が日本マンションを所有している場合でも、銀行口座所在地だけで相続税の課税関係は決まりません。同様に、中国国籍という事実だけでも結論は出せません。
不動産投資で事前整理すべき事項
日本不動産を個人名義で購入するか、日本法人・海外法人を通じて保有するかにより、将来の相続時に承継する財産の性質が変わります。ただし、法人を使えば自動的に日本の相続税がなくなるという意味ではありません。法人株式の所在地や評価、実質的な資産構成、被相続人・相続人の状況など別の論点が生じます。そのため、単なる節税目的だけで海外法人を介在させる判断は慎重であるべきです。
中国側との関係
中国側の相続制度や税務、中国にある資産の承継手続と、日本の相続税は別々に確認する必要があります。また、香港・シンガポールに資金がある場合、その口座の名義変更・相続手続と日本不動産の相続登記も別の法的手続です。「資金を香港に置いているから日本不動産の相続税も香港扱いになる」という理解はできません。
購入時から残しておきたい情報
- 日本不動産の登記名義と実質的な所有関係
- 取得価額、購入時契約書、資金出所
- 所有者本人と家族の住所・居住国の変化
- 遺言の有無と日本国内の相続手続担当者
- 海外法人保有の場合は株主構成・法人所在地・財務資料
今回のニュースをどう読むか
今回の8月27日資料は公益信託制度等に伴う通達整備の解説であり、中国人の日本不動産相続に直接新税を導入したニュースではありません。したがって過度に拡大解釈する必要はありません。一方、日本の資産課税通達は法改正に応じて継続的に更新されており、長期保有を前提とする中国人投資家は、売却時の所得税だけでなく相続・贈与まで定期的に制度確認することが重要です。
一次情報と確認日
国税庁資産課税課「相続税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」、資産課税課情報第14号、2026年8月27日。2026年9月5日確認。