結論
国税庁は2026年9月4日、所得税関係の「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」の一部改正通達を公表しました。これは所得税法等の一部を改正する法律などの施行に伴い、既存の取扱いを整備するものです。中国人による日本不動産投資では、住宅取得、改修、土地・建物の譲渡などに各種特例が存在しますが、特例の適用判断を数年前の解説記事や旧通達だけで行うのは危険です。
今回何が起きたか
国税庁の法令解釈通達は、法律そのものとは異なりますが、税務行政上どのように法令を解釈・運用するかを確認するうえで重要な一次情報です。今回の通達は「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)等の施行に伴い、既往の取扱いを整備したもの」と説明されています。公表日は2026年9月4日であり、9月11日時点で直近の所得税実務更新の一つです。
日本不動産でなぜ重要か
日本の不動産税務には、通常の取得・保有・賃貸・売却課税とは別に、一定の住宅取得、改修、買換え、譲渡などについて租税特別措置法上の特例が設けられています。しかし、これらの制度は対象物件、本人居住の有無、取得時期、居住開始時期、所得要件、床面積、保有期間などの条件が細かく定められています。単に「住宅を買った」「日本にマンションを持っている」というだけで特例を使えるわけではありません。
特に中国本土居住者が東京のマンションを純投資目的で購入し、第三者に賃貸するようなケースでは、自己居住用住宅を前提とする控除を当然に利用できるわけではありません。一方、日本に移住して実際に居住し、日本の税務上の居住者となった中国籍個人が自宅を取得する場合には、投資物件とは異なる住宅税制の検討余地があります。ここでも国籍と税務上の居住者区分、投資用途と自己居住用途を分けて判断する必要があります。
購入時の実務
物件購入時には、登録免許税、不動産取得税、印紙税、固定資産税等の精算に加え、所得税上の住宅関連特例を検討することがあります。ただし、所得税の住宅関連控除は購入者自身の利用状況などが重要であり、中国居住の非居住者が単に日本不動産を取得したことだけを理由に適用される制度ではありません。営業資料で「日本の住宅なら税額控除が使える」と一般化した説明を受けた場合は、具体的な条文上の要件を確認する必要があります。
売却時の実務
売却についても、居住用財産の特例と投資用不動産の通常の譲渡所得課税は区別しなければなりません。また、非居住者が日本の土地・建物を売却する場合には、一定の場合に買主側の源泉徴収制度が関係しますが、そこで差し引かれる金額は最終的な譲渡所得税額そのものではありません。居住用特例の適用可否と、非居住者に対する源泉徴収義務の有無は別の論点として整理する必要があります。
中国側課税との関係
日本側で何らかの特例が適用された場合でも、その結果が中国税法上そのまま同じ扱いになるとは限りません。中国の税務居住者が日本不動産の賃貸・売却所得を得た場合、中国の国外所得ルールに基づく申告の検討が必要です。また、日本で実際に納付した所得税については、中国側で一定の外国税額控除が利用できる可能性がありますが、日本で非課税となった金額まで当然に外国税額控除できるわけではありません。
実務上の注意点
- 2026年度改正後の条文、政省令、国税庁通達を基準に確認する。
- 投資用不動産と自己居住用住宅の特例を混同しない。
- 日本国籍・中国国籍ではなく税務上の居住者区分を別途判定する。
- 売却時の源泉徴収と譲渡所得の最終税額を分ける。
- 日本の特例適用結果と中国の国外所得課税を別々に計算する。
今後確認すべきこと
特例税制は個別条件による差が大きいため、取得契約日、引渡日、居住開始日、物件用途、床面積、所有期間、売主・買主の税務居住地を取引ごとに整理する必要があります。2026年9月4日付通達は最新改正を反映する重要資料ですが、個別の不動産取引について特例適用を断定するには、該当条文と事実関係を個別に照合することが必要です。
一次情報と確認日
国税庁「『租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて』の一部改正について(法令解釈通達)」を2026年9月11日に確認しました。