結論
中国本土など日本国外に居住する投資家が日本不動産を売却・賃貸している場合、2027年1月以後の支払については源泉徴収計算を必ず最新制度で再確認する必要があります。財務省は2026年9月8日、令和8年度税制改正の詳細解説について訂正を行いました。同改正では2027年1月から所得税額に対して1%の防衛特別所得税を課す一方、復興特別所得税の税率を1%引き下げる制度が導入されます。
今回何が起きたか
財務省の「令和8年度 税制改正の解説」は所得税、租税特別措置、国際課税、登録免許税など広範な改正内容をまとめた公式解説で、9月8日に一部訂正が公表されました。中国人投資家に特に関係するのは、防衛特別所得税が2027年1月から始まる点です。国税庁も現行の非居住者向け源泉徴収案内で、令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税を源泉徴収する旨を明記しています。
現行の不動産源泉徴収との関係
2026年中の現行制度では、非居住者等から日本国内の土地・建物等を購入する場合、一定の例外を除き、買主側が譲渡対価の支払時に10.21%を源泉徴収する制度があります。また、日本国内の不動産を非居住者等から借りて賃料を支払う場合には、一定の住宅賃貸の例外を除き、20.42%の源泉徴収が問題となります。ただし、これらは支払時の源泉徴収率であって、売却益や賃貸所得に対する最終税率ではありません。
売却については、実際の取得価額、譲渡費用、所有期間その他の条件に基づいて譲渡所得を計算し、確定申告によって最終税額を精算します。源泉徴収額が最終税額を上回れば還付となる可能性があり、逆に不足すれば追加納税となる場合があります。賃貸についても収入金額そのものではなく、必要経費等を踏まえて所得を計算するため、20.42%を最終的な賃貸所得税率と理解してはいけません。
中国人投資家への影響
重要なのは「中国国籍かどうか」ではなく、支払時点で日本税法上の居住者か非居住者かという区分です。例えば中国籍でも日本に生活の本拠があり日本の居住者に該当する場合には、非居住者向け源泉徴収ルールを機械的に適用できません。一方、中国本土、香港、シンガポール等に居住し、日本で非居住者に該当する所有者が日本不動産を売却する場合には、国内源泉所得として日本側課税が生じ得ます。
2027年決済で注意すること
2026年に売買契約を締結しても、代金の支払が2027年になる案件では、契約日だけで判断せず、実際の支払日とその時点の源泉徴収制度を確認する必要があります。分割払い、手付金・残代金の支払、法人買主による決済などでは、どの支払についてどの税率を用いるかを決済前に税務専門家や所轄税務署へ確認するのが安全です。現在表示されている10.21%や20.42%という数字を2027年以降の取引書類へそのまま転記することは避けるべきです。
中国側の国外所得課税
中国の税務居住者に該当する個人については、日本不動産から生じる賃貸所得や譲渡所得が中国の国外所得申告の対象となる可能性があります。ただし、日本で税金を支払ったから中国では必ず同額が追加課税されるという意味ではありません。中国の個人所得税法および国外所得に関する規定では、一定の範囲で国外で実際に納付した所得税について外国税額控除が認められる仕組みがあります。そのため「日本税率+中国税率」を単純加算して総負担を計算することは適切ではありません。
実務上の注意点
- 売主・貸主の国籍ではなく、日本税法上の居住者・非居住者区分を確認する。
- 10.21%、20.42%は源泉徴収率と最終税額を区別する。
- 2027年以後の支払は防衛特別所得税導入後の最新計算方法を確認する。
- 中国の税務居住者であれば日本所得の中国申告と外国税額控除を別途検討する。
- 香港・シンガポール口座への入金自体は税務居住地を変更するものではない。
一次情報と確認日
財務省「令和8年度 税制改正の解説」を2026年9月11日に確認しました。9月8日に公式ページ上で訂正が行われており、今後2027年の源泉徴収実務について国税庁から追加様式・計算方法等が示される可能性があるため、年をまたぐ取引は最新情報の再確認が必要です。