結論

OECDは2026年9月8日、「Tax Policy Reforms 2026: OECD and Selected Partner Economies」を公表しました。今回の報告書は、OECD/G20 BEPS包摂的枠組みに参加する92の国・地域から得た回答を基に、2025年に導入または公表された税制改革を比較したものです。個人所得税、法人所得税、消費税・VAT、環境関連税に加え、資産課税も分析対象です。

中国人による日本不動産投資に直接新しい税率を設定する報告ではありませんが、世界的に国境を越えた所得・資産を取り巻く税制が継続的に見直されていることを示す最新の一次資料として重要です。

OECDが今回示した税制改革の方向

OECDによると、2025年の税制政策は国ごとの経済状況や財政余力によって多様化しました。一部の国では成長・投資支援を重視し、別の国では財政上の圧力に対応するため、限定された課税ベースに対する増税や資本所得課税等の見直しを行っています。

個人所得税では、所得の高い層に対する税率や資本所得課税を見直した例がある一方、物価上昇への対応として低・中所得層の負担を軽減する措置も採られました。つまり、世界共通の単一方向ではなく、各国が所得課税・消費課税・資産課税を組み合わせて調整している状況です。

日本不動産を持つ中国人にとって何が重要か

国際不動産投資では、「どこの国籍か」「どこの銀行口座を使っているか」だけでは税負担を判断できません。最低でも、不動産の所在地、所得の発生地、本人の税務居住地、所得の種類、源泉徴収、最終税額、外国税額控除を分けて確認する必要があります。

例えば、中国居住者が日本不動産を所有している場合、日本にある不動産から生じる賃料や譲渡所得には日本側の課税関係があります。一定の非居住者への賃料について20.42%、一定の不動産譲渡対価について10.21%の源泉徴収が行われることがありますが、これらはいずれも機械的な最終税率を意味しません。

中国の個人所得税法では、中国の居民个人は中国国内および国外から取得する所得について課税対象となり得ます。一方、国外で実際に納付した一定の所得税については、中国側の限度額の範囲内で外国税額控除を利用できる制度があります。したがって、「日本で課税された後、中国で同じ率がそのまま上乗せされる」といった単純計算は適切ではありません。

香港・シンガポール口座も別論点

日本不動産の購入資金を香港から送金する、賃料をシンガポールで受け取る、売却代金を香港銀行に着金させる、といった資金移動は、実務上よく見られます。しかし銀行口座所在地は税務居住地そのものではありません。

香港・シンガポールはいずれもCRSを運用しており、2026年には両地域でCRS関連制度の更新・強化が進んでいます。金融機関が保有する税務居住地情報と、投資家が日本や中国で行う税務申告との整合性を保つことが重要です。

購入・保有・賃貸・売却の各段階

  • 購入:取得税・登録免許税・仲介費用・消費税等を物件価格と分けて把握する。
  • 保有:固定資産税等、日本国内で発生する税・費用と国外申告を区分する。
  • 賃貸:20.42%の源泉徴収があるケースでも最終税額とは限らない。
  • 売却:10.21%の源泉徴収と実際の譲渡所得税額を区別する。
  • 中国申告:居民个人に該当する場合、日本所得を中国の国外所得として検討し、日本で実際に納めた税額の外国税額控除可否を確認する。

今回のOECD報告をどう読むべきか

Tax Policy Reforms 2026は個々の日本不動産取引の税額を決定する資料ではなく、92地域の税制変更を比較する政策資料です。そのため、個別投資判断では国税庁、中国国家税務総局、各国税務当局の国内法・通達を確認する必要があります。ただし、資本所得や資産課税を含む税制が国際的に継続して見直されているという方向性は、3年、5年という期間で海外不動産を保有する投資家にとって重要です。

今後確認すべきこと

投資家は毎年、税務居住地、日本の源泉徴収、確定申告、中国の国外所得申告、外国税額控除、CRS自己証明を一つの一覧で更新すると管理しやすくなります。税制改正が行われた場合も、どの段階の税負担が変わったのかを切り分けて確認できます。

一次情報と確認日

OECD「Tax Policy Reforms 2026」を2026年9月9日に確認しました。公表日は2026年9月8日です。