結論
中国本土など日本国外に居住する投資家が日本国内の不動産を売買・賃貸する際の実務コストに、2026年10月1日から重要な変更が生じます。国税庁が公表した令和8年度消費税法改正資料では、非居住者に対して提供する国内不動産の売買、交換または貸借の代理・媒介などについて、役務を受ける者の居住地にかかわらず、消費税の課税対象とし、輸出免税の対象外とすることが示されています。
今回何が変わるのか
従来、国外の非居住者から依頼を受け、日本の事業者がその非居住者の所有する国内不動産を売却した場合の仲介手数料等について、一定の場合には非居住者向け役務として輸出免税が適用されていました。改正後は、日本国内に所在する不動産の売買・交換・貸借の代理または媒介というサービス自体が日本国内不動産と密接に結び付くため、非居住者向けであっても輸出免税から除外されます。
適用開始日は2026年10月1日です。ただし、国税庁資料では経過措置として、2026年3月31日までに締結された契約に基づいて行う役務については改正前の取扱いが適用されるとされています。このため、単純に決済日だけを見るのではなく、仲介契約等をいつ締結したか、どの契約に基づく役務なのかを確認する必要があります。
中国人投資家への影響
特に影響が大きいのは、中国本土居住者、香港・シンガポール居住者など、日本の所得税上の非居住者として日本不動産を保有する投資家です。購入時の買主側仲介、売却時の売主側仲介、賃貸契約に伴う媒介などについて、課税事業者である日本の仲介会社が提供する対象サービスでは、消費税を含む請求額になる可能性があります。
ここで注意すべきなのは、この改正は不動産売却益に対する所得税率や、非居住者への売却代金支払時の10.21%の源泉徴収率を変更するものではないという点です。10.21%は一定の非居住者等から国内不動産を取得する際の譲渡対価に対する源泉徴収であり、売主の最終的な譲渡所得税率ではありません。今回の制度変更は、主として仲介等の役務に係る消費税の取扱いです。
購入・賃貸・売却実務
- 購入:海外居住の買主が日本の仲介会社に支払う対象仲介サービスについて、10月1日以降の消費税取扱いを見積書で確認する。
- 賃貸:オーナーとして募集・媒介を依頼する場合、仲介・媒介サービスの課税関係を確認する。
- 売却:従来輸出免税として見積もられていた売却仲介手数料が、改正後は課税対象になる場合がある。
- 管理・修繕:国内不動産の管理や修理等は従来から輸出免税とならない場合があり、今回の仲介等の改正と混同しないことが重要である。
税務居住地との関係
中国籍であることだけで非居住者になるわけではありません。日本の消費税上・所得税上の取扱いを検討する際には、実際の居住状況や取引主体を確認する必要があります。また、香港やシンガポールに銀行口座を持っていること自体は、本人の税務居住地を決定しません。
今後確認すべきこと
9月中に売買または賃貸案件を進めている海外投資家は、仲介会社から受け取った媒介契約、見積書、請求予定額を再確認するのが実務的です。特に2026年3月31日以前の契約に基づく取引については経過措置の適用可否を個別に確認する必要があります。
一次情報と確認日
国税庁「令和8年度消費税法改正のお知らせ」を2026年9月9日に確認しました。