結論

国税庁は2026年8月31日、「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」の一部改正を公表しました。国税庁が明記する今回の改正趣旨は「国税システムの更改に伴う所要の整備」であり、土地の使用貸借について新たな相続税・贈与税を導入する制度改正ではありません。しかし、中国人を含む外国人が日本国内の土地や住宅を家族に無償で使用させている場合、相続・贈与時の権利関係と評価を確認する契機として重要です。

使用貸借とは何か

使用貸借は、賃料を受け取らずに土地や建物を使用させる契約関係です。不動産投資では通常の賃貸借が中心ですが、家族所有の土地に子が建物を建てるケース、親族に住宅を無償で使わせるケース、親が取得した土地を子の住宅用に提供するケースなどでは使用貸借が問題になります。

国税庁の通達は、建物または構築物の所有を目的とする使用貸借に係る土地について、相続税・贈与税上どのように扱うかを整理しています。また、当事者の一方が法人の場合には原則として法人税の取扱いに準拠する点にも注意が必要です。

今回の改正の位置づけ

2026年8月31日の法令解釈通達には、改正の趣旨として国税システム更改に伴う整備であることが明記されています。そのため、「親族への無償使用が2026年8月31日から新たに贈与税対象になった」と解釈するのは適切ではありません。実務では、改正前から存在する使用貸借の税務ルールと、今回変更された書式・事務処理上の部分を区別して理解する必要があります。

中国人投資家に多い注意場面

日本不動産を所有する中国人投資家では、購入後に本人が海外へ戻り、東京の住宅を子どもや親族が無償で使用するケースがあります。また、親名義の土地に子名義の建物を建てるなど、土地と建物の所有者が異なることもあります。この場合、通常の投資用賃貸とは異なり、賃貸借なのか使用貸借なのか、地代を実際に支払っているのか、権利金の授受があるのかといった事実関係が重要になります。

非居住者課税とは別の論点

所有者が中国本土や香港へ移住して日本の非居住者になったとしても、使用貸借の相続税・贈与税問題と、不動産所得に対する所得税の非居住者課税は別制度です。親族から賃料を受け取っていないのであれば通常の賃貸所得とは事実関係が異なります。一方、実際には定期的に金銭を受け取っている場合、それが賃料なのか費用負担なのかを契約書や送金記録から確認する必要があります。

相続・贈与で重要になること

日本国内に土地や建物を所有する外国人についても、日本の相続税・贈与税が問題となる場合があります。ただし、具体的な課税範囲は被相続人・贈与者・相続人・受贈者の住所や在留状況、国籍、取得財産の所在地など複数の条件によって変わります。「外国人だから日本の相続税はかからない」「海外居住だから日本の贈与税は無関係」と一律に判断することはできません。

法人所有物件はさらに注意

国税庁通達は、使用貸借の当事者のいずれか一方が法人である場合、原則として従来どおり法人税の取扱いに準拠するとしています。中国人投資家が日本法人名義で土地を取得し、代表者やその家族に無償または低額で使用させるケースは、個人間の単純な使用貸借と同じ前提で処理すべきではありません。法人税、役員に対する経済的利益等の論点も含めた確認が必要です。

実務上のチェック項目

  • 土地と建物の登記名義人が誰か。
  • 使用者と所有者の関係。
  • 賃料・地代・権利金の支払いが実際にあるか。
  • 固定資産税や管理費を誰が負担しているか。
  • 親族間で使用貸借契約書を作成しているか。
  • 将来の相続・贈与時に所有権をどのように移転する予定か。

今後の対応

今回の通達改正そのものは国税システム更改に伴う整備ですが、外国人所有者にとっては家族間の日本不動産利用方法を棚卸しする良い機会です。特に高額な東京都心土地では、相続・贈与時の評価額が大きくなるため、所有名義と実際の利用関係が一致しているかを早い段階で整理しておくことが重要です。

一次情報と確認日

国税庁の2026年8月31日付法令解釈通達を2026年9月7日に確認しました。