結論

国税庁e-Taxは2026年8月28日、国税システム更改に対応する「報告事項の提供方法(CRS)に係る仕様書(KSK2対応版)」を更新しました。全仕様書と受付システムインターフェース仕様書が更新され、今回の更新内容は2026年9月24日から受付開始予定とされています。これは税率やCRSの対象者を直ちに変更する法改正ではありません。しかし、中国人投資家にとっては、日本の税務当局がCRSによる金融口座情報の収集・交換を新システムへ継続的に移行しているという重要な実務情報です。

今回何が起きたか

国税庁が公開するKSK2対応版一覧では、2026年8月28日付で全仕様書が更新され、特に「受付システムインターフェイスに関する仕様書」が同日更新されています。国税システム自体の更改に合わせた技術対応であり、金融機関等がCRS報告を行うための電子的な受付基盤が整備されています。

CRSの制度上の意味

CRSは、金融機関が非居住者等の口座について一定の情報を税務当局へ報告し、参加国・地域の税務当局間で金融口座情報を自動交換する国際的枠組みです。重要なのは、香港やシンガポールに口座を置けばその国だけで課税関係が完結するわけではない点です。口座所在地と本人の税務居住地は別概念です。例えば中国本土の税収居民が香港やシンガポールで金融口座を保有している場合、該当するCRSルールの下で口座情報が税務居住地側に交換され得ます。

中国人投資家への影響

日本不動産を購入する中国人投資家は、物件代金の決済、家賃受領、売却代金の受領などに香港・シンガポール・日本の銀行口座を利用することがあります。しかし、銀行口座の所在地を変えても本人の税務居住地が自動的に変わることはありません。中国の税務居住者に該当するか、日本の税務居住者に該当するかは、それぞれの国内法や必要に応じ租税条約上の基準で判断する必要があります。国籍だけで「中国居住者」と断定することも適切ではありません。

日本不動産実務との関係

CRSそのものは不動産登記情報を直接交換する制度ではありません。一方、日本不動産に関連して発生する家賃、売却代金、金融資産残高などが金融口座に入れば、金融口座情報と税務申告との整合性が重要になります。日本で不動産所得や譲渡所得が生じ、中国など別の国でも国外所得の申告対象となる場合、各国で納付した税額や外国税額控除を含めて整理する必要があります。「日本で税金を払ったから中国では何もしなくてよい」「中国で20%、日本でも20%程度だから合計40%」という単純な理解は適切ではありません。

実務上の注意点

  • 銀行へ届け出ている税務居住地・TIN等が現在の状況と一致しているか確認する。
  • 日本不動産の家賃や売却代金の入金口座と申告資料を対応させる。
  • 香港・シンガポール口座の保有だけを根拠に税務居住地を判断しない。
  • 日本と中国の双方で課税対象になる可能性がある場合、外国税額控除の適用可能性を別途検討する。

今後確認すべきこと

今回の8月28日更新は主として電子申告・情報受付の技術仕様更新です。2026年9月24日の受付開始予定後も、CRS報告制度そのものの法的要件、対象口座、本人の税務居住者判定は別途確認する必要があります。投資家側では「どの銀行に資金があるか」だけでなく「どの国の税務居住者として、どの所得を申告する必要があるか」を一体的に管理することが重要です。

一次情報と確認日

国税庁e-Tax「報告事項の提供方法(CRS)に係る仕様書(KSK2対応版)一覧」。2026年8月28日更新、2026年9月5日確認。